実在へ、供養の歴史学 元禄期、津軽弘前藩の仕置・牢死・「百姓〈自分〉仕置」・治安費用負担者の研究/舘山誠
本書は、長年にわたる『弘前藩庁日記』(「国日記」)の精読と、「弘前藩仕置集」の翻刻・公刊作業から生まれた研究成果です。元禄八・九年の飢饉時に、藩の刑事司法と村落の治安維持がどのように作動し、津軽領民の生死の様態はいかなるものであったか。自害・盗み・強盗・殺人・放火、それに対する拷問・追放・処刑・牢死、あるいは、流浪・捨子・乞食化・倒死・餓死―これらは津軽領で起きた死の「洪水」といってもよいものでした。さらに述べますと、元禄・宝永期の藩による仕置や村落における「百姓〈自分〉仕置」事例の詳細な分析の積み重ねから、藩の治安維持に関わるコストや責任が、村や町の負担すべき分として、どれほど、また、どのように放下・配分され、制度化されていったか、言いかえれば藩=国家による治安維持コストがどのように外部化されていったかなど、弘前藩の統治意思や構造の特徴のいくつかが見えてきたわけです。こうした分析からは、近世社会の統治支配において駆動している権力のエコノミーの一端が見えてきます。
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